イラン情勢の終わりが見えず、ホルムズ海峡の緊張が続くなか、原油高騰の波が思わぬ形で身の回りを侵食し始めた。基礎化学品の原料ナフサの不足による影響は商品の値上げにとどまらず、私たちが目にする景色を変えようとしている。
製菓大手のカルビーは、業界トップブランドのポテトチップスのパッケージについて、カラーインクの調達が難しくなっていることを理由として、一時的に白黒に変更すると発表した。ほかにも、かっぱえびせんやフルグラなど14品が対象になる。
テレビや新聞で目にする白黒包装の商品は見るからに冷たく、食欲がそそられる感じもない。当たり前すぎてこれまで気づきもしなかったが、食品は色鮮やかな包装があってこそ買う気になる。それが棚から少しずつ消え、白黒の商品に埋め尽くされるというのはなかなか、想像するだけでゾッとする。
白黒ポテチのニュースを聞いて、昭和に大ヒットした大瀧詠一の「君は天然色」がよみがえった。失った大切な人の写真だけがカラーのまま、輝きのないモノクロームの世界に再びまぶしい色彩が戻ることを願う。
人の心に響く名曲はいつまでも色あせることがないが、あれから45年が過ぎたいま、核兵器国のリーダーによってもたらされた経済の混乱は、豊かな経済、平和な日常の象徴である色彩を奪い、現実を物理的に破壊しようとしている。
「ポテチの袋が白黒になる」というニュースは話題性十分、国際情勢の被害者でもあるメーカーはすでに十分なCM効果を得たとの見方もある。いつかは元の状態に戻るのだろうが、色のない世界は味気ない。(静)

