本屋大賞、坪田譲治文学賞を受賞した人気作「成瀬は天下を取りにいく」の著者、宮島未奈の近作「それいけ! 平安部」をご紹介します。和歌山県の高校司書らがオススメ本をリストアップした「わかイチ本」では1位に選ばれました。

 あらすじ 「平安時代に興味ない?」高校入学式後、新しいクラスでそう声をかけられた牧原栞。声の主、平尾安以加は「私、平安時代が大好きなの。だからこの学校に平安部をつくりたくて」。平安部? それは一体何をやる部なのか…。ともかく、部を成立させるには5人の人員が必要だ。「あと3人」を探す2人は、クラスメイトで「何でもいいからクラブに入りたい」という大日向大貴、安以加の幼なじみのイケメン光吉幸太郎、歴史研究部で百人一首を専門としていた2年生の明石すみれを次々に勧誘。「平安の心を学ぶ」をキーワードに、5人は手探りで自分たちなりのクラブ活動を繰り広げていく。

 そして夏が来て、京都で開かれる「蹴鞠選手権大会」に出場することになった5人。強豪「京都大学蹴鞠研究会」はそろいの紫のTシャツに白い行書体で会名を書き、大層強そうだが、「菅原高校平安部」も負けてはいない。サッカー大好き大日向君を中心にしたプレーで順調に勝ち進み、決勝で京大チームと対戦することになったのだ。「気合い入れて行こう」5人は円陣を組む。「それいけ!」「平安部!」

 日本史大好きな私ですが、本当に好きなのはもっぱら戦国武将と幕末の志士。雅やかな公家文化の平安時代に関心を持ったことはあまりありませんでした。一昨年の大河ドラマ「光る君へ」で、意外と権力闘争など不穏な時代だったのだなとは知りましたが、本書の平安部員たちは「平等院で売ってる仏像カード」で神経衰弱したり、安以加のおじいちゃんが指導する教室で「平安」と墨書してみたりと、のどかに平安文化?を楽しみます。

 超イケメンの光吉くんを含め、悪い人が一人も出て来ないのも大きな特徴。「平安の心を学ぶ」という目標を掲げていますが、彼らは時代名を超え、文字通りの「平安」の心を生きているようです。

 ゆるーい高校部活を追体験できる、あったかい一冊でした。同じ著者の「成瀬は天下を取りにいく」等、「成瀬あかり」シリーズ3部作も読んでみたくなりました。(里)