先日、友人が旅行先でちょっと信じられない体験をした。家族と車で初めての山口県へ出かけ、有名な萩の松下村塾や岩国の錦帯橋を訪ね、ついでに立ち寄った先で事件が起こった。
そこはある作家の生家。作品を読んだことはないが、「ここから車で5分ほどですよ」といわれ、話のネタにでもと思い、行ってみることにしたらしい。
家は現在、観光施設としてNPO法人の運営で公開されており、料金を払って中に入ると、その作家の仏壇があった。宗派は自分と同じ。「お参りされる方は線香を折って横にして」との張り紙があり、ろうそくに火をつけ、その通り線香を折って横に倒して手を合わせた。
目を閉じてお念仏を唱えていると、NPOの女性が寄ってきて、「火事になる~」といいながらろうそくを消した。「はぁ? お参り禁止とは聞いてませんけど」「すいません、3時回ったら、火事になったら困るので…」。いやいやいや、おっしゃる意味がまったく分かりかねる。
入館時に注意もなければ張り紙もなく、まるで友人がルールを破って火災を起こしかねない状況をつくったかのような言い方。キレそうなのをこらえ、黙って施設を出たが、やはりどうにも腹の虫がおさまらない。車を止め電話で文句をいったが、ひたすら繰り返される謝罪がかえって空々しく聞こえたという。
それにしても、仏壇の前で心静かに手を合わせている人に向かって、なんという言葉を…。最も重要なおもてなしどころの話ではない。施設は国の登録文化財らしいが、友人はなんの落ち度もない作家の名前を聞くたび、いやな思い出がよみがえる。とんだ災難、心よりお見舞い申し上げます。(静)


