
3月のテーマは「春の味」。短編の名手、19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した米国作家の作品をご紹介します。
「アラカルトの春」(新潮文庫、О・ヘンリ著、大久保康雄訳「О・ヘンリ短編集(一)」所収)
「賢者の贈り物」「最後の一葉」などで知られる著者。ニューヨークのレストランのメニューをタイプで打つ仕事をしているサラーと、故郷の恋人ウォルターを描くコメディーです。
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もう二週間もウォルターからの手紙を受け取っていないのだ。献立表のつぎの品名はタンポポだった――卵を添えたタンポポ料理――タンポポ、ウォルターがその黄金色の花の冠を、あの女王、未来の花嫁としての彼女の頭に飾ってくれたタンポポ―春のさきぶれ、彼女の悲しみへの悲しみの冠――最もたのしかった日の思い出。(略)シェークスピアが言ったように、恋とは、おのが身を食い尽くすものかもしれない。しかしサラーは、彼女の胸のまことの愛の最初の情熱の饗宴を飾ってくれたタンポポを食べる気にはなれなかった。


