3月のテーマは「春の味」。この季節ならではの味覚について書かれた本を紹介します。

 「千年ごはん」(東直子著、中公文庫)

 著者は現代歌人。広島県出身ですが、父が和歌山県出身とのことで、本書にもみかんや茶粥、梅干など和歌山グルメが登場します。

 四季ごとの味を短歌作品とともに紹介しており、春の章では山菜の天ぷらを紹介しています。

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 あたたかい陽射しの中に、やわらかそうなものが芽吹いていると、つい、天麩羅にしたらおいしそう、と思ってしまう。ふきのとうの天麩羅、よもぎの天麩羅、せりの天麩羅、つくしの天麩羅。(略)

 天麩羅には大根おろしを入れた天つゆがつきものだが、山菜の天麩羅は、ぜひとも塩でいただきたい。シンプルな塩味は、草の持つひなたの匂いを殺さないようにひきたててくれる。(略)さくさくとした食感のあとに、じんわりと広がる草と光の記憶。ずっと忘れていたことを思い出せそうな気がする。