
もはや英米では日本文学は村上春樹一強ではないという。
イギリスの書店の翻訳小説の棚では、ランキング上位を占めるのは日本文学だけだという。今や「ポスト村上」ではなく、「ポスト村田」だ。「村田」とは、村田紗耶香である。「コンビニ人間」で芥川賞を受賞し、その「コンビニ人間」は英米でベストセラーとなり、英国だけでも二百万部を売り上げている。
他にも、小川洋子、多和田葉子、柳美里、川上未映子、川上弘美、金井美恵子、市川沙央、松田青子、柚木麻子等である。男性作家では、中村文則、平野啓一郎、阿部和重、吉田修一、田中慎弥、又吉直樹、東野圭吾、横山秀夫、伊坂幸太郎等となっている。これでは日本の書店となんら変わりがないではないか。では、なぜこれほどまで日本人作家が人気があるのか?、著者はこのように分析している。これは英語帝国主義からの解放だという。英語が世界言語の標準だとされる常識のなかで、マイノリティ言語への復権が根底にあると述べている。確かに、日本語は日本という国以外では話されていない。つまり、マイノリティ文化を理解しようという傾向があるというのだ。
現在、英語圏では外国語を学ばない風潮にあるらしい。それゆえに他言語の文学を読まない、出版しない、翻訳しない、等であったというのが従来の立場であった。しかしこの傾向がこの十五年で大いに変わってきた。英国のリサーチ会社の調査によると、欧州の外国語学習では主要四言語を抑えて日本語が第一位だという。また、若い人ほど翻訳もの、特に小説を好むという。若者に人気が広がるのはTikTokの影響で「特に経済的な不安定さに関する内容だと、自分自身の物語のように感じられる」からだという。
また今のイギリスにおける日本小説のブームには二つの潮流がある。一つは純文学系で、もう一つは「フイーリングフィクション」としての癒し系の物語だ。前者が「現実と向き合いその壁を乗り越えていく読書」なら、後者は「現実から逃避する読書」だ。
柳美里の「JR上野駅公園口」の翻訳者のモーガン・ジャイルは、「書店でふっと目に留まって読み始めると、引き込まれて夢中で読み始めた。読んでビビっとくる小説が翻訳したい小説だ。『私はこれが好きなんだ』と世界に向けて叫び続けるのが翻訳者の仕事なのだ」と述べている。
日本文学はいまや世界文学となっている。(秀)

