
筆者がこの本を知ったのは書評家の三宅香帆のyouTubeであった。三宅香帆は京大で日本文学を学ぶのであるが、そのきっかけとなったのがこの本だ。
「伊勢物語」は平安時代の歌人在原業平の物語だと云われているが、しかし彼以外の男性も登場する。全編・恋物語の「歌物語(うたものがたり)」として有名である。
読み進めると、俵万智と三宅香帆の二人の女性の「恋話(コイバナ)」が聞こえてきそうだ。但し平安時代の恋愛なので、現在の恋愛とはかなり違う。
その一つが「通い婚」である。これは、男性は気に入った女性がいれば彼女に和歌を送る。そして返事の和歌に色よいことが書かれていれば、恋愛は成立してその女性の元に通い、やがて結婚をする。但し、同居はしない。これが「通い婚」である。
そしてその女性の方も「通い婚」の相手は何人もいたりする。つまり一夫一婦制ではなく一夫多妻制もあれば多夫一妻制もある。これが平安時代の恋愛模様だ。本書はそんなことがよく分かる内容となっている。登場する和歌は歌人である俵万智が現代語訳してくれるので容易に分かる。著者は大学を卒業すると高校で古典の教師をしていたので、このような先生に教えて貰えたなら古典の授業も楽しいものになったことだろう。
何故『伊勢』の題名になっているかも解説しているので興味が湧く。とにかく、「三角関係あり、老婆とプレイボーイの関係あり、せつない片思いあり、浮気話あり、許されぬ恋あり」と、もうなんでもありで楽しいこと限りない。(秀)


