1月のテーマは「馬」。2人で1つのペンネームを使い1989年にコンビ解消した岡嶋二人の、競馬をテーマとした初期ミステリーをご紹介します。

 「あした天気にしておくれ」(岡嶋二人著、講談社文庫)

 徳山諄一、井上泉のコンビである岡嶋二人。競馬を題材にトリックやプロットを考えるのは徳山氏のお得意で、デビュー作「焦茶色のパステル」も競馬の話でした。本書はデビュー2作目として出版された、競走馬を巡る誘拐ミステリーです。

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 最終コーナーに近付くに従って、後続馬が徐々に差を詰めてきた。先頭からしんがりまでが六馬身ほどで、最終コーナーを回る。

 私は思わず足を踏み出した。

 七頭が横に拡がり、蹄音と共にこちらに迫ってくる。騎手が懸命に手綱をしごくのが見える。(略)

 三頭並んだ内側に江見の赤い帽子が見える。先頭からは五馬身おかれている。ゴールまでに届くのか…。
「そのまま! そのまま!」
「かわせ!」

 あたり一帯が客の喚声に包まれた。