2026年、令和8年がスタートした。今年の干支は丙午(ひのえ・うま)である。筆者が生まれた1966年、昭和41年からかぞえて60年、暦が一巡りした◆生まれ年の十干十二支を特に意識したことはなかったが、高校の時には筆者の学年は一つ上、一つ下の学年よりも2クラス少なく、否応なしに意識することになった。1クラス45人だったから90人、100人近く少なかったことになる。日本全国では、60年前の出生数は約136万人。前年比25%減と、およそ4分の1も前年より減っている◆その迷信が広まるもととなったのが、当日高地方、中津村(現日高川町)三十木出身といわれる井原西鶴の著書「好色五人女」中の一編「恋草からげし八百屋物語」。江戸時代初期の17世紀、火事がもとで出会った寺小姓の吉三郎にもう一度会いたいと、自宅に火をつけて火刑になった八百屋の娘「お七」の物語だ。当県出身の坂本冬美さんがうたった「夜桜お七」もこの物語をモチーフとしている。当時お七は16歳。15歳以下なら死罪とはならず、裁きの役人が思いやって「年は15か」ときいたが「お情けはありがとうございますがお七は嘘が嫌いです。お七は16にございます」と答えたという逸話もあり(「好色五人女」には書かれていない)、その心意気が江戸の人々の心を捉えたともいわれる◆いま思うのは迷信の恐ろしさというより、「物語」の持つ力の強さである。お七という16歳の少女の一途な恋が、三百年後の国の人口を左右している。人々が物語に意味を見いだすことを望むからこその、大々的な反響であろう◆季節ごとに、年ごとに、人もまちも新たな物語を加えていく。今年、我々の故郷にはどんな物語が生まれていくのだろうか。(里)


