
12月のテーマは「宴」。児童文学の名作から、一家のお祝いの場面をご紹介します。
「冬の光 続・優しさごっこ」(今江祥智著、新潮文庫)
妻と別れ、一人で娘のあかりの子育てに奮闘する作家の姿を描いた「優しさごっこ」。数年後、中学生になったあかりと主人公の日々を描いた続編です。
* * *
あかりはとうさんと、とうさんの助手の島田さんの三人でレストランにいる。四条河原町にあるフランス料理店「萬養軒」だ。(略)とうさんは、ぶどう酒を注文し、これやったら口当たりもええし、二人とも飲めるやろ…とついでくれていた。(略)三人でグラスをかちんとあわせた。たしかに口当たりがよかったので、あかりはすぐにお代りし、たちまち四杯ものみほしてしまった。(略)
―四年ものあいだ、男手ひとつで、よう育ててやったやろ、あかり。
―ん?
あかりはとろんとした目をあげて答えた。
―よう育ってやったやろ、わたしも…。
一瞬おいて、島田さんが吹きだし、とうさんも吹きだした。


