100年近い歴史を持つ紀州鉄道が廃線の危機に陥っているのは既報の通り。かつては木材運搬などの貨物輸送に利用され、地域の産業振興に貢献。昔の車体(キハ)はクリーム色と緑のツートンで、「りんこう(御坊臨港鉄道)」の愛称で親しまれ、近年は車両も変更されたが、日本一短いローカル私鉄として鉄道ファンの人気を集め、写真を撮る姿も多くみられる。昨年は御坊市出身のヤマサキセイヤさんがボーカルのキュウソネコカミが凱旋ライブを行い、紀州鉄道の列車にサインを残したことも話題になった。あくまで民間企業が経営している鉄道であり、年間約5000万円もの赤字が続いている中、軽々しいことは言えないが、地域にとってぜひ残してほしい、残すべき観光資源だと思う。

 廃線の危機を受けて、市では今月中にも関係機関や事業者を交えた専門組織を立ち上げて、存続の可能性を本格的に探ることになった。今月4日には、折しも和歌山電鐵貴志川線が存続に向けて事業者と関係自治体が連携し、公設民営の「完全上下分離方式」の移行を目指す合意をしたところ。初代たま駅長をはじめ猫の駅長で全国的に注目を集めている鉄道で多くの観光客も来ているが、それでも経営は厳しく、以前から自治体の財政支援を受けている。地方鉄道の運営の難しさは並大抵のことではないことが分かる。

 今後、紀州鉄道を継承する事業者が出てくるのか、市が相応の財政負担をしていくことになるのか、それはまだ分からない。いずれにしても、事業者と行政の連携だけではお金も続かず、存続は難しいだろう。これまで以上に地域が一丸となって紀州鉄道を盛り上げ、支えていく態勢づくりが必要ではないか。(吉)