由良町人権尊重推進委員会の講演会で、北朝鮮による拉致被害者で新潟産業大特任教授の蓮池薫さんの講演を聞いた。会場には約250人の住民らが集まり、拉致被害という現実の重みを実感した。
蓮池さんは1978年7月、新潟県柏崎市の海岸で交際していた奥土祐木子さんとデート中、複数の男に襲われ北朝鮮へ連れ去られた。当初は外国人工作員として育成されるはずだったが、北朝鮮が自国の若者を工作員にするよう方針を変更。蓮池さんは日本語を教える任務を与えられ、8年間で12人を指導し、翻訳の仕事をこなしながら24年が過ぎた。その間、奥土さんと結婚し、子どもにも恵まれたが、帰国は諦めていたという。
転機となったのが2002年の小泉純一郎総理の訪朝だった。蓮池さんは一時帰国の対象に選ばれ、当初は再び北朝鮮へ戻るつもりだったが、考えを変え、記者会見で子どもの返還を訴え、2年後には子どもも帰国できた。講演の最後には、拉致被害者家族の高齢化が進む中、一刻も早く被害者を日本へ戻す必要性を強く訴えた。
講演を聞いて、拉致という犯罪行為を国ぐるみで行う恐ろしさ、家族から引き離され異国での生活を余儀なくされている被害者のいたたまれなさを改めて感じた。そして蓮池さんが繰り返し口にした「風化させてはいけない」という言葉が胸に残った。
問題解決に向けて個人ができることは、限られている。ただこういった講演に足を運び、語り合い、関心を絶やさないという行動が、問題を社会から消さないための一歩となる。小さな町の公民館まで足を運び、訴え続ける蓮池さんの姿に、その思いを強くした。(城)


