本紙の企画「昭和100年」で由良町と日高町を結ぶトンネル「由良洞隧道(ゆらどうずいどう)」、通称「旧由良トンネル」を取材した。心霊スポットとして有名なので知ってはいたが、調べてみると建設は明治時代と古く、国内最古級の現役トンネルであることがわかり、歴史的な価値に気づいた。

 実際に池田側から向かうと、すぐに現場の厳しさを思い知らされる。舗装こそあるが、崩落した岩や落石が散らばり、対向も難しい細道だ。谷側はガードレールもなく、足元をすくわれれば一巻の終わり。タイヤがパンクするリスクもあり、正直、観光気分で訪れるような場所ではない。行ってみたい人も多いだろうが、個人的にはおすすめできない。

 それでも、坑口に立った瞬間、背筋を伸ばされた。内部のレンガは明治22年の開通当時のまま残り、壁面には手仕事の跡が生々しい。車は十分に通れる広さではあるが現在のトンネルよりは狭く低く、照明がなく真っ暗なところは確かに怖さを感じるが、当時の空気を感じることのほうに意識が向いた。

 トンネルの池田側の坑口はレンガ積みだったのが象徴的だったが2022年にコンクリートで固められた。残念ではあるが安全を優先したうえとのことで致し方ないだろう。また残念なのは、内部の壁に残る落書きの数々。明治の空気をそのまま封じ込めた空間を、どうかこれ以上汚さないでほしいと思う。

 県ではこのトンネルを使用し続けていく方針で、今後も現役最古級トンネルの名は続きそうだ。心霊スポットとして語られるのも一つの姿かもしれないが、このトンネルが「怖い場所」ではなく、「残すべき場所」として語り継がれるよう願いたい。(城)