歴史ある日本画団体、有秋会主催の第83回有秋会日本画展で、津本千絵さん(55)=御坊市=が大阪府教育委員会賞、橋本厚洋さん(77)=御坊市=が大阪市教育委員会賞を受賞した。2人とも日高町の鈴蘭会(鈴木薫さん指導)に所属しており、今回は初出品で上位入賞。同展は今月21日から26日まで、大阪市立美術館天王寺ギャラリーで開かれる。

津本さんの大阪府教育委員会賞受賞作品「河口の秋」

 有秋会は昭和16年(1941)、日本画家の久保田耕民氏が中心になって流派を超えた会として組織された歴史ある団体。毎年秋に公募展を開催している。
 津本さんは高校の美術部で絵を始め、水彩画や油彩画を描いていたが、10年ほど前から鈴蘭会に入会して日本画を描くようになった。今回の入賞作品は「河口の秋」。F50号の大作で、日高川河口を堤防から見て描いた。手前に紅葉したハマボウを配し、1艘のボートを中心に雰囲気ある作品に仕上げている。「洋画を描きながら、日本画の雰囲気にもひかれており、10年ほど前から本格的に始めました。日本画の絵具は時間が経つと思っていた色とはまったく違う色になってしまったりして難しいのですが、やりがいがあります。今回の作品は、ボートの映る影、白い光の反射など水面を美しく描くよう心がけ、遠景の葦がぼうっとかすんで見える部分に苦心しました。歴史ある会でこのような賞を頂き、光栄に思います」と喜びを話している。

橋本さんの大阪市教育委員会賞受賞作品「追憶」


 橋本さんは定年退職してから鈴蘭会に入会して日本画を始めた。今回の入賞作品のタイトルは「追憶」。P50号の大作で、岡山県の無人駅、美作滝尾駅を描いている。「男はつらいよ」シリーズの一場面に登場し、山田洋次監督が「日本一美しい無人駅」と述べた駅。寅さんファンの橋本さんは、実際に訪れて写真に収めた。木造の静かなたたずまいの駅舎や線路を描き、ホームには寅さんのトランクと帽子も描き込んでいる。「若い頃は絵とは無縁で、学習雑誌にスポーツ選手の似顔絵を載せてもらったことがあるぐらいだったのですが、退職してから日本画を始め、充実した毎日を送っています。今回の作品は、窓の光の反射などに苦心して仕上げました。このような賞を頂き、驚くと共にとてもうれしく思います」と話している。