和歌山高専の学生たちが、道成寺の桜から採取した酵母を使ったパンづくりに挑んだ。御坊市のパン店「ヤナギヤ」の協力を受け、学生自らも生地をこね、オーブンで焼き上げた。発酵実験を繰り返し、なかなか膨らまない生地と向き合いながら2年をかけて完成させたパンは、通常の酵母より発酵に時間はかかるものの、香り豊かで個性ある味わいに仕上がった。11月の高専祭では来場者向けに販売することも決まっている。
同校ではこれまでも地元の酵母を使ったビールづくりに取り組んできた。発酵のメカニズムを学びながら試行錯誤を重ね、地域の風土を感じられる味を追求してきた。ただ、ビールは飲める人が限られるため、今回はより多くの人が手に取り、日々の食卓で親しまれるパンに目を向けた。小さな子どもからお年寄りまで、誰もが安心して味わえる形で地域の酵母を生かしたかったのだ。
パンは世代を問わず身近な食べ物。そのパンが和歌山の風土に根差した「地パン」として生まれたことには、単なる商品開発を超える意味がある。「ここでしか食べられない」と思える一品は、そのまま地域の魅力の発信につながり、地域に新たな可能性が芽生えることになる。
もちろん改良の余地はまだ大きい。味の幅を広げ、より特徴を際立たせていくことが今後の課題だ。地域の新しい特産となる可能性を秘めた「地パン」。ビール酵母の研究も続いており、新たな地域の酵母を使った挑戦も模索している。今回のパンも今後さらに研究が引き継がれ、より完成度を高めながら次世代の学生へと受け継がれていくことになるだろう。今後の展開に期待したい。(城)


