日高高校の図書館で、広島市の高校生による「原爆の絵」展を取材した。「原爆の絵」は、広島の高校生たちが被爆者から聞き取った体験をもとに描いた作品で、2007年度から制作が始まり、現在は207枚が完成しているという。
原爆と聞いて思い浮かぶのは、きのこ雲や原爆ドームなど象徴的な風景が多い。だが、この展示に並ぶのは、被爆直後の市民の姿。衣服は焼け落ち、全身をやけどした人々、皮膚がむけて白くただれた体、トラックに何層にも積み重ねられた死体、燃えさかる街の中で逃げ惑い、焼かれていく人々。どの絵も悲惨な光景が描かれていた。
なかでも強く印象に残ったのは、服が焼け、裸同然となった人々が、両手を前に突き出して歩く姿を描いた一枚。体験者のコメントには、「何千もの幽鬼(亡霊)の群れ」とあった。ゆっくりと歩きながら、次々と倒れていく。両手を突き出しているのは、はがれた腕の皮膚が地面につかないようにや、腕と腹のただれた皮膚がくっつかないようにという。かつて「はだしのゲン」で目にした光景ではあったが、実際にその証言をもとに描かれた絵を見ることで、あらためて原爆の恐ろしさが胸に迫った。
苦しむ人の表情、多くの命が失われた現実に、高校生たちは筆を通して向き合ったのだろう。描くこと自体が、心をすり減らす体験だったに違いない。それでも、「見なかったことにしてはいけない」「未来に伝えなければならない」という思いが彼らを動かしたのだと思う。
「原爆の絵」は、広島平和記念資料館のホームページなどでも公開されている。絵の中に描かれた痛みと向き合うことが、平和への一歩なのかもしれない。(城)


