テレビ全盛時代、番組の人気は視聴率ではかられた。本来は業界関係者だけが知り得る数字はいつからか公表され、視聴率至上の制作現場によくない風潮が生まれた。

 視聴率の調べ方として、よく聞いた話では、無作為に選ばれた協力者の家のテレビに「いまどのチャンネルを見ているか」が分かる装置をつけ、何万世帯分ものデータを集めていたという。たしか、漫画家みうらじゅん氏の京都の実家にもあったとか。  ある日、視聴率調査会社の人が来て、何やら怪しい装置をつけさせてほしいという。協力費にもよるが、その装置をつけた場合、見る番組によって自分の嗜好やセンスを知られるという意識が働く。結果、モニターの入れ替え当初は全国で、NHKが急上昇するという話も聞いたことがある。

 ようは、いつもお堅いニュースを見ている「かしこ」に思われたい。この誰もが笑ってしまうあるある、都市伝説のような視聴率と同じシステムが、この令和の時代にもがっつり生きている。政治に関する世論調査というやつだ。

 抑揚のないAIの自動音声で、郵便番号、年齢、支持政党、投票したい候補者などを尋ねられるらしい。普通に忙しいほとんどの人は、相手が自動音声と分かった瞬間に切ってしまうだろう。こんなものが統計的に信頼できるのか。

 テレビの街頭インタビューもそうで、顔が映る以上、賢くみられたい、人とは違う考え、庶民の不満を代弁したいという意識が働く。制作側も当たり障りのない声より、とがった怒りの方が素材としてありがたい。

 世論の支持を失ったといわれる岸田首相。果たして実態はどうなのか。そこにメディアによる欺瞞、風評被害はなかったか。(静)