パリオリンピック開幕まであと1週間、今月のテーマは「パリ」とします。
「パリ 旅の雑学ノート」(玉村豊男著、新潮文庫)
エッセイストで画家、パリ大学への留学経験のある著者が体験をもとに、パリでの生活の心得、パリジャンならではの「粋」なやり方などを生き生きとつづります。
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パリのカフェは外へ向かって開かれている。(略)場所の関係からテーブルをはさんで差し向かいに椅子が置かれる場合もあるが、基本的にはテラスの椅子はいっせいに同じ歩道の方向を向いている。その街に向かって開かれた雰囲気が、いかにもパリという明るい、自由な都会にふさわしいのだ。(略)
タイミングをみはからってオヤジが、「メルシー!」といってその小銭をサッと取り、小皿をパーンと音をたてて勢いよくカウンターの上で裏返す。この「メルシー! パーン」がじつに、カフェのカウンターで立ち飲みをしている!という実感をわきたたせるもので、とくに一連の手順がスムーズにタイミングよく行くときわめて気持ちがよい。