初夏の風物詩として知られるホタルが日高地方でも飛び始めた。日高川町の玄子地内などを流れる中津川ではゴールデンウイーク明けから水面で乱舞。取材で訪れると、川沿いでたくさんのホタルが淡い光を点滅させながら舞っている光景が見られた。その光景は子どもの頃に見た懐かしいホタルを思い出させてくれ、心を癒やしてくれた。
筆者の実家近くには小さな川が流れ、たくさんのホタルが飛び交っていた。家の中に迷い込んでくることもそう珍しくなかった。それは筆者の経験だけに限らず、他の地域に住んでいた同年代の知り合いからも同じような話を聞く。昔はどこの山間部でも当たり前に見られた光景だったのだろう。
しかし、近年は河川の改修、川の水質環境の悪化などが要因で、昔と比べて激減した。2011年の紀伊半島水害でも大きな被害を受け、エサとなるカワニナやホタルの幼虫が流され、一気に減ったという声も聞いた。
子どもの頃に見たホタルが飛び交う光景は大人のなっても心に残る。激減したホタルを昔のように復活させようと、取り組んでいる地域もある。それだけホタルに対する地域住民の思いは強いのだろう。ホタルは生まれ育った地域の象徴の一つといえる。
ふるさとは心のよりどころとなる。時代や環境の変化を超越し、いつまでも存在し続ける。困難な状況や自信を失ったとき、ふるさとを思い出すことで前向きになり、新たなエネルギーを得ることもできる。故郷を離れて心が疲れたとき、ホタルが飛び交う光景を思い浮かべると、その場にホタルがいなくても傷ついた心を優しく癒やしてくれるだろう。(雄)