植物博士の大賀一郎氏が1951年、千葉県の検見川で2000年以上前の蓮の種を発掘し、開花に成功した「大賀ハス」。二千年ハスともいわれる古代のロマンあふれる花が、日高地方でも毎年楽しめる。大賀博士と師弟関係にあった、日高高校教諭だった故阪本祐二氏の仲介で62年、美浜町三尾の大賀池に分根された。以来62年にわたり、故阪本氏の長男の尚生さんが会長を務める和歌山大賀ハス保存会が現在も大賀池を維持管理し、大賀ハスを守り続けている。
ハスは2000年前の種が花を咲かせるほど生命力が非常に強い。阪本会長によると、根の部分にあたる蓮根も生命力が強く、大賀池に分根された当時の蓮根が今も花を咲かせているという。ハスが花を咲かせたあとの種で花を咲かせると、交雑等で花の遺伝子が少し変化していってしまうようだが、蓮根からは原種のままの花を咲かせるという。千葉県がルーツの大賀ハスは全国各地に分根されているが、分根当時の原種の花を今でも咲かせているのは、大賀池を含めて全国で5カ所。大賀池の存在価値がいかに大きいかを示している。
その大賀池が危機に直面しているのは既報の通り。池の老朽化による漏水は年々ひどくなっている。いかにハスの生命力が強いといえど、池に水を貯えられなければ花を咲かせることはできない。大賀ハスは美浜町のみならず日本の宝といっても過言ではない。改修のために行政をはじめ多くの支援があることを祈る。加えて、保存会メンバーが高齢化しているのも課題の一つ。原種の大賀ハスを守っていくためにも、保存会が存続できる体制づくりを考える必要もある。(片)