22年に1羽だけ飛来が確認されたカシラダカ

 かつては日高地方でもスズメと並ぶほどたくさん見られていた冬鳥のカシラダカが、近年は激減していることが、野鳥等を研究している農学博士の上出貴士さん(51)=日高町高家=の長年の調査で明らかになった。元高校教諭で野鳥研究の第一人者、故黒田隆司さんらの50年前の調査結果と、上出さんがここ12年間の調査結果を比較して判明した。身近な生態系の変化を知る貴重な資料となる。

 カシラダカは全長14~15㌢のスズメほどの大きさの小鳥。ユーラシア大陸に広く分布し、大陸北部で繁殖、主に日本など東アジアで越冬する。日本には冬に飛来し、水田などの開けた環境を好み、集団で生活するのが特徴。以前はよく目にする鳥とされ、1960~70年代の日高地方の平野ではスズメに次ぐ最も多い鳥の一つとされていた。黒田さんと当時生徒だった崎晴雄さんが1960~70年代に行った調査では、日高地方の全鳥類の14・4%(7441羽)を占めていたが、80年代から世界各地で減少が知られるようになった。

 上出さんは元々、海洋生物の研究をしていたが、野鳥などの生き物にも興味があり、カシラダカは2010年10月から22年5月までの12年間にわたって、日高町高家地内の田んぼを中心に個体数の変動を調査。12年間のうち飛来が確認されたのは12、14、15、16、17、18、22年、飛来数は1羽から77羽。群れも数羽から20羽程度とわずかで、10年以降のデータでは全鳥類に占める割合はわずか0・05%にまで減少。昨年から今年にかけてはまだ飛来が確認されていないという。

 調査結果から上出さんは「日高地方でも国内外と同じ減少傾向であることが示された。黒田氏らの研究があったから50年前との比較ができたことは、生態系の変化を知る上で非常に貴重」と意義を強調。「繁殖地で環境に問題があるのかもしれないし、カシラダカが減ったことで、別の鳥などの生き物が増えているかもしれない。専門家が調査できることは限られており、多くの人に興味を持ってもらうことが自然科学の調査につながるので、私の研究が住民の皆さんに少しでも身近な生き物に興味を持つきっかけになればうれしい」と話している。