父が好きだった手話を交えながら歌をうたう大島さん

 印南町教育委員会、社会福祉協議会主催の人権福祉講演会が24日、3年ぶりに体育センターで開かれ、約500人が参加。「九ちゃん」こと坂本九さんの長女で歌手の大島花子さんが「つながる命 大切な命」をテーマに、歌とトークを披露した。

 大島さんは1973年、坂本九さんと女優柏木由紀子さんとの間に生まれ、92年にミュージカルで初舞台。その後、「自分の言葉で表現したい」と歌手活動を開始し、03年に父の名曲「見上げてごらん夜の星を」でデビューした。 

 85年、11歳のときに日本航空123便墜落事故で坂本さんを亡くした。以来、大切な人を失った人に寄り添い手助けをする「グリーフケア」を学び、現在は各地で命の大切さをテーマにしたコンサートを開催している。

 講演会では歌をうたいながら、両親との思い出や日航機の事故のことなどを話した。父については「手話が好きで、小さい頃からよく教わっていたので楽しいこととして記憶に残っています」とエピソードを交えつつ、「手話は普段使っている言葉に込められた気持ちを伝える大切な手段」ということを伝え、手話で歌を披露。来場者と一緒に「夕焼け小焼け」を手話でうたう場面もあった。

 事故については「父を亡くして今もなお、悲しみを乗り越えていません」と話し、事故から約20年間は現場に行けなかったこと、マスコミに追われ不安な日々を過ごしていたことなどを振り返った。

 そんな中で出会ったのがグリーフケア。前を向いて生きていく力をもらったという。「同じような経験をした人と話したことで、悲しみがとけた気がします。悲しいときに寄り添えるのはやはり人しかいない。泣きたいときは思いっきり泣いていい」と悲しみとの向き合い方を教え、名曲「上を向いて歩こう」をうたった。

 父と過ごした最後の日、大島さんは父に「庭そうじをしよう」と言われたことが楽しい思い出として残っているという。「ありきたりな一瞬、当たり前の日常が、生きている命の大切さなんだということを、今振り返って実感しています」とし、最後に「見上げてごらん夜の星を」を披露。会場は温かい拍手に包まれた。