「みんなちがって、みんないい」と素朴な言葉で、いまの世にこそ必要と思われる真理をうたった「私と小鳥と鈴と」。東日本大震災発生時のCM時間に流れ、多くの人の心を捉えた「こだまでしょうか」。作者は童謡詩人・金子みすゞ。1930年、26歳の若さで他界した◆なかにしあかね作曲「金子みすゞの詩による同声合唱曲集『このみちをゆこうよ』」が今月8日、岸和田市制百周年記念岸和田市少年少女合唱団定期演奏会でうたわれた。御坊少年少女合唱団がゲスト出演し、岸和田の合唱団との合同ステージで声を響かせた。昨年12月下旬、御坊市で行われた両合唱団の合同練習を取材した◆「わらい」「きりぎりすの山登り」等の5編から成る。岸和田の指揮者松尾卓郎さんは「語尾まできれいに、みすゞさんの気持ちになって」と指導。「すごくチャーミングな人だったんですよ」と話し、「きりぎりすの山登り」は最後の作品と伝えてくれた。それを聞いて「はっ」と胸を衝かれ、子どもたちも居住まいを正したように思った◆実生活ではつらい経験を重ねていた作者。幼くして父を亡くし、結婚生活も幸福とは言い難く、離婚する際は娘の親権を得られなかった。「きりぎりすの山登り」は「きりぎっちょん山登り、朝からとうから山登り」と軽快に始まる。「ヤ、ピントコドッコイ、ピントコナ」と勇ましくもかわいい掛け声で、きりぎりすは山を登る。しかし目的地はあまりに遠い。26年で生を終えた作者が最後にこの世に残した詩と思うと、ある切なさが胸に迫る◆練習の取材では、子どもたちのすがすがしいハーモニーによって金子みすゞの言葉が心に染みとおってきた。演奏会後も2団体の交流は続くという。詩の力、音楽の力が時を超えて生き続ける様を見たように思った。(里)