先日、筆者が一番好きだった声優の訃報が発表された。小林清志さん、享年89歳。1971年から昨年秋まで半世紀にわたり、国民的人気アニメ「ルパン三世」でルパンの相棒次元大介役を務めた◆本放送を5歳で見て以来のファン。小5の時にパート2が開始されたが、筆者は第1回で大きく失望した。肝心の次元の顔が、パート1と大きく変わっていたのだ。シャープだった鼻の線が何となく鈍重になり、ニヒルな笑みを浮かべていた口元も地味になった。「こんなのは次元じゃない」と怒って、第2話からは見なかった◆大学生の時、毎週日曜昼にパート1・2が延々と再放送され、改めてパート2を全話視聴。「絵柄は多少変わっても、次元はやっぱり次元」だと認識し、生まれて最初に好きになったアニメキャラが、最も好きなアニメキャラであり続けることになった。それは声からにじみ出る「次元の人間性」がパート1から一貫していたためである。「義理がたくて頼りになる男」という、パート1オープニングに次元のキャラは集約されている。のちに「次元はほぼ地声で、最も自分に近い」とする小林さんのインタビューを読んだ◆パート2以降の魅力の一つは、舞台を世界に広げたところ。小林さんが一番好きな作品は1992年のテレビスペシャル「ロシアより愛をこめて」だという。当時の国名はソ連で、「ロシア」という響きに古い文化への憧れが込められる時代だった◆昨秋スタートした第6シリーズから次元役は、初代五エ門役だった大塚周夫氏のご子息、大塚明夫氏にバトンタッチ。引退に際し小林さんはコメントを残した。「ルパン、おれはそろそろずらかるぜ。あばよ」。(里)