例年はコロニーをつくるが今年は1羽も飛来していない大碆

 県内最大のウミネコの繁殖地として知られる由良町白崎海岸周辺の岩場で、今年は全く飛来せず、関係者が心配している。ウミネコが集団で営巣するコロニーがみられる岩場「大碆(おおばい)」にも1羽もいない異常事態。海南市の県立自然博物館でもこの事態を把握しており、原因を調査していたところ、ハヤブサが原因である可能性が高いことが判明。来年は戻ってきてほしいと願っている。

 美しい石灰岩の景色が圧巻の白崎海洋公園近くの海岸では、毎年4月下旬から7月上旬にかけてウミネコが飛来し、産卵と子育てをしている。中でも県道からすぐ近くの大碆は例年、30ペア前後のウミネコが夫婦で子育てする県内最大のコロニーとして知られ、間近に見られるスポットとしても愛好家から人気が高い。

 ところが今年は産卵時期になっても1羽も飛来せず、関係者が心配していた。通常なら今の時期は卵からかえったヒナがすくすく成長し、親鳥と同じくらいの大きさになるころだが、6日午前中も大碆には1羽の姿もみられなかった。

 県立自然博物館の鳥類・哺乳類が専門の学芸員佐々木歩さんも今年は飛来していないことを把握し、心配していた1人。原因を調べていたところ、現地で観察していた愛好家から今年6月中旬に「おととしの6月下旬に、ハヤブサがウミネコのヒナを捕食しているのを確認した。昨年も飛来は少なく、今年はゼロ。ハヤブサが原因では」とハヤブサがヒナを捕食する写真とともに情報提供を受けた。佐々木さんによると、ハヤブサもウミネコももともとこの地域に生息し、共存している鳥で、ハヤブサがウミネコのヒナを少しずつ捕食することは珍しいことではない。ただ、ハヤブサの写真から若い個体だと判断でき、「初めて営巣するハヤブサで、見境なくウミネコのコロニーに突っ込んでヒナを何度も捕食したのではないか。ウミネコにとっては、『それはルール違反だ。こんなハヤブサがいるところで子育てはできない』と感じたのでしょう、次の年には飛来数が激減し、今年はゼロになってしまったのではないかと推察しています」と分析。「ハヤブサも成長してヒナの捕食の仕方を勉強すると思うので、いずれウミネコも戻ってくると思います。来年は戻ってきてほしい」と話している。

 県内では白崎に次いで繁殖地となっている美浜町三尾の弁天島(海猫島)にも今年は飛来しておらず、こちらの原因は分かっていないという。