小惑星探査機「はやぶさ2」が6年間のリュウグウへの旅を終え、地球に帰還してからおよそ1年半。仕事の大きな成果が今、明らかになってきている◆初号機「はやぶさ」が、イトカワから満身創痍で地球に帰ってきたのは2010年。採取サンプルを地球に届け、大気圏に突入して燃え尽きた。ニュースで、「はやぶさー! ありがとうー!」と叫ぶ撮影者の声が入った動画が印象的だった。プロジェクトは相次いで映画化された◆初号機の教訓が注ぎ込まれた「はやぶさ2」は、数々の「世界初」を実現して一昨年12月に帰還。プロジェクトに携わってきた北海道大学大学院理学研究院教授、圦本尚義さん(日高川町出身)の講演を何度か取材した。難なくミッションをこなすはやぶさ2の軌跡を紹介し、「順調過ぎて映画になりませんね」と笑いを誘っていた。リュウグウは水が存在する可能性から名付けられたと、圦本さんの講演で知った◆今回はやぶさ2が持ち帰ったサンプルから、リュウグウの元となった天体には「大量の水があった」との分析結果が発表された。更に、23種類のアミノ酸を検出。太陽系の初期の様子を知る貴重な手がかりになるという◆地上の人々が目の前のことに取り組んでいる間、探査機とそれを操る人々は、途方もない時空を超えて生命の謎に迫り得る「玉手箱」を手に入れていた。一方、地上の一部では資源と財力を費やして地球に傷を付け幾多の生命を奪うという受け入れ難い行為が続けられている◆この世界をこれ以上損なうことなく無事に次世代へ渡すには、宇宙的視野に立った本当の英知が必要となる。はやぶさ2の大きな功績に思いを寄せることは、奇跡的に生命が生まれたこの星の遠い過去、そして遠い未来を思うことにつながる。(里)