日高地域鳥獣被害対策本部(本部長=日裏勝己印南町長)は10日、日高地方で深刻化するニホンザルの管理捕獲を進めるため、住民向けの対策マニュアルを作成した。地域住民が主体の取り組みを推進することを基本方策とし、①サルの情報収集と捕獲する群れ選定②発信機を使った行動域や個体数把握③大型檻設置と餌付け――の3段階を経て効果的かつ効率的に集団捕獲する方法を示している。

 日高地方での鳥獣による農作物被害額は生息環境の変化、耕作放棄地の増加などを原因に高止まりの傾向が続き、2020年度は5221万9000円。中でもサルの被害が年々拡大し、20年度の被害額は1863万5000円で全体の4割近くを占めている。県内全体ではイノシシの被害が多いが、日高地方はサルの被害が突出。個体数は把握しきれていないが、日高町や日高川町では約200匹の群れが生息しているという。

 今回、独自にまとめた日高地域ニホンザル対策推進方針に基づき、住民主体の捕獲手段を県内で初めてマニュアル化。サルの特徴を解説したうえで、第1段階では住民へのサル出没アンケートなどによる大まかな情報収集、捕獲する群れの選定を行う。第2段階では優先的に対応すべき群れのメスに発信機(GPSやテレメトリー)が付いた首輪を装着して行動域や個体数を調査。機材は国の補助金などを活用して購入できる。第3段階では被害レベルに応じた管理手法を選択、大型捕獲檻を設置する場合は必ずサルが通るルートに設置し、長期の餌付け期間を設けて十分にならし、多頭捕獲につなげることとしている。また、住民主体の取り組みが前提だが、行政や専門家との連携、市町間ごとの情報共有などが大切としている。捕獲マニュアルなどは今後研修会や講演会などを通じて周知していく。

 日裏本部長は「人とサルの知恵比べとなっているが、いろいろ研究して管理捕獲を進めていきたい」と話した。