全日本柔道連盟は、小学5、6年生を対象に毎年夏に行っていた個人戦の全国小学生学年別大会を、今年から廃止する。理由は「極端な勝利至上主義」の是正のためという。勝つためにまだ成長過程にある子どもに心身とも無理をさせるのはよくないのは当たり前。全柔連の決断は個人的には支持するが、根本的には全国大会が悪いのではなく、指導者の資質の問題だということを、各指導者がどれだけ自覚するかということに尽きるのではないか。子どもに対する行き過ぎた指導は、全国大会を目指す、目指さないにかかわらずなくなっていないということだろう。

 室伏広治スポーツ庁長官も定例記者会見で「早い段階から全国大会をやることに意義はあるのか」と疑問符をつけられた。一方で、全国で1番になることを目標に頑張っている子どもたちも多い。取材を通して、そんな志の高い小中学生アスリートと出会うこともたくさんある。単に全国大会をなくすことは、そういう選手たちの目標を奪うことになりはしないか、そんな懸念を抱いてしまうのも事実。上には上がいる、あんなすごい選手を超えたい、全国レベルの大会を観戦するだけでも選手にとっては大きな刺激になることもある。これが今の現実ではないか。

 全国大会をなくするということは、子どもたちが向かっていく方向を「今1番になる」から「将来1番になる」に転換が必要ということだと思う。それは日本のスポーツ界すべてにつきつけられた課題だといえる。そして行き過ぎた指導をする人よりも、素晴らしい指導者がたくさんいることも認識している。子どもの可能性を伸ばす指導がより求められている。(片)