ロシアの侵略に対するウクライナの戦いは、南東部の都市マリウポリがいよいよ陥落寸前と伝えられる。各地で多くの民間人の虐殺が確認されているが、プーチン政権は国際社会の非難などどこ吹く風。攻撃の手を緩める気はまるでない。


 ロシア軍侵攻の大きな目的は、8年前に親欧米派の大規模デモによって親露派政権が倒されたことへの復讐。そのデモに合わせて創設されたのがウクライナ民族主義を掲げる武装集団アゾフ大隊であり、マリウポリは国民の英雄の彼らが本拠地としている。


 プーチン氏はアゾフ大隊を「ネオナチ」と呼ぶ。ウクライナの非ナチ化を目的に、自政権がウクライナからの独立を承認した親露2地域の要請を受けて「特別軍事作戦」を実行したのだと理屈をこねるが、ようは不倶戴天の敵、アゾフ大隊のせん滅こそ第一の目的であろう。


 旧ソ連の対ドイツ戦勝記念日の5月9日は、プーチン氏にとって国民向けに作戦成功を宣言する最高のステージとなる。これまではその筋書きに沿った動きで、一部で勝利宣言を機に停戦交渉が加速するとの見方もあったが、都市の惨状をみるにつけ、またも希望的観測に終わる気がしてならない。


 ロシアと長い国境を接しながら、軍事的中立のスタンスでNATOに加盟していないフィンランドが大慌てで加盟へ動き始めた。その隣のスウェーデンも同様。また、ウクライナ危機以降、スイスやオーストリアもEUの制裁に同調している。


 国家の主権と独立、国民の生命を守るために、自衛力を高め、同盟強化に努めるのは当然。どの国も、悪夢のような現実に危機感を抱いた国民(世論)が政治を後押ししている。日本はどうするか。選択肢は目の前にある。(静)