地域活性化や観光には昔から「よそ者、若者、ばか者」がいればうまくいくと言われている。固定概念にとらわれず、何にでもチャレンジする人たちが力を発揮してくれるという考え方。近年の地方創生などのまちづくりで、一概にそれが当てはまらない例もあるし、もちろん地元住民だけで成功している地域もたくさんあるが、確かに「よそ者」という外部からの視点は、新しい地域活性化の方向性や取り組みにおいて効果的な面があるのではないかと思う。

 日高地方で考えてみれば海、山、川の大自然がある。筆者の場合は旧美山地区に住んでいるので、いつも周りは山に囲まれ、道路沿いを見れば日高川が流れている。山は春に桜が咲き、秋には紅葉が鮮やか。空気が澄んだ夜空には星が輝いているが、かといって毎日、毎日それを見ていると当たり前の風景ととらえ、そこに価値を見いだせなくなっている。ところが、都会からの移住者が見れば、そんな地元住民にとっては何気ない風景にも感動させられるようで、あらためて自分たちの住んでいるところが素晴らしい場所なのだと感じさせてくれる。

 印南町印南原地区ではそんな美しい森林を守っていこうと、有志の「いなはらMORIクラブ」が発足した。言い出しっぺはまさに名古屋からの移住者で、山村ならではの風景に大きな魅力を感じたという。当面は枯れ木伐採などの保全活動を行い、将来的には散歩コースにしようと夢を膨らませている。いくら美しい自然でも、放っておけば荒れてしまうこともある。それを守るため立ち上がった行動力に敬服しつつ、今後、魅力ある地域スポットになっていくことを期待したい。

(吉)