みなべ町の青年農業者でつくる梅郷クラブの山本宗一郎さんが、全国農業者会議のプロジェクト発表で最優秀賞となる農林水産大臣賞を受賞したのは既報の通り。日本一の梅のまちといえども後継者不足は大きな課題で、耕作放棄地は増えている。そこで立ち上がったのが梅郷クラブ。所有者が依頼しやすいように安い値段で伐採を請け負っている。山の斜面での重労働、自分たちの仕事の合間を縫っての活動は口で言うほど簡単なことではない。それでも彼らを突き動かすのは、耕作放棄地を放置すれば病虫害や鳥獣害の温床となり、産地を脅かすことにつながりかねないという危機感だ。

 実際、同町内の耕作放棄地は2010年に35㌶だったのが、15年には74㌶と倍増している。今後、後継者不足に比例して耕作放棄地が増え続けるのは容易に予想できる。誰かが立ち上がらないと歯止めはかからないと分かっていても、いざ行動となると簡単ではない。梅郷クラブの行動力がどれほど価値あるものかが分かる。後継者問題、放棄地問題は全国的な課題で、梅郷の取り組みはモデルケースといえるだろう。単に伐採だけでなく、備長炭の原木となるウバメガシ、ニホンミツバチのすみかとなる広葉樹の植樹にも発展させているのも素晴らしい。

 世界農業遺産・梅システムの持続につながる活動である。梅システムは400年続く持続可能な栽培方法。梅郷の取り組みを見ていると、400年をつないできたのは仕組みではなく人なのだとあらためて感じる。自分のことだけでなく産地を思い行動する青年農業者たちの存在こそが地域の宝。こういう団体を支援する行政であってほしい。   

(片)