NHK大河ドラマは昨年の「青天を衝け」で60作目。61作目の「鎌倉殿の13人」が3話まで放映された◆60作で最も多いのはやはり戦国(安土桃山含む)で25作、次いで幕末の15作。視聴率という観点でみると、1987年放映の渡辺謙の出世作「独眼竜政宗」は平均視聴率39・7%で歴代トップ。ちなみに最高視聴率は2作目「赤穂浪士」の討ち入りの場面で、実に53%を記録した◆低い方では2019年の「いだてん」8・2%、12年の「平清盛」と15年の「花燃ゆ」が12・0%。多くの人に見られなかったから失敗作かというと、筆者にはそうは思えない。「花燃ゆ」で主人公の兄・吉田松陰が地元の獄から江戸へ送られる前日だったか、自分の足で外を歩くことを禁じられ、弟子に背負われて外へ出る。「走ってくれ」と頼み、疾走する弟子の背中から二度と戻れない故郷の野山を目に焼き付ける。個人的に大河屈指の名場面と思っている。また、「いだてん」中盤では関東大震災が描かれ、故郷の九州に帰っていた主人公の金栗四三が急ぎ東京へ戻ろうとすると、義母が大量の救援物資を託してこう言う。「韋駄天は、人々のために走って食いもんば運ぶ神様たい」。タイトルと主人公の行動が見事に重なり、涙したものだ◆さて、「鎌倉殿の13人」である。脚本は三谷幸喜。これまで3話を見たところでは、大河ドラマというより「三谷幸喜作品」を鑑賞するつもりで見た方がいいかもしれない、というくらい従来の大河のイメージからは逸脱。筆者は三谷ファンでもあるので、それもまたよしと楽しんでいる。あまり知名度のない北条義時のドラマをどのように盛り上げていくか、大河の幅を広げ新たな視聴者を獲得することに成功するか、いろんな意味で楽しみな1年である。

(里)