今年はどんな1年になるだろうか。明るいニュースが少しでも多い年になってもらいたいが、そんなことをぼーっと思っていられるだけでも幸せだ。

 昨年12月18日、拉致被害者家族会前代表の飯塚繁雄さん(享年83歳)が亡くなった。飯塚さんは北朝鮮による拉致被害者、田口八重子さん(行方不明時22歳)の兄で、2007年から家族会の代表を務めていたが体調を崩し、11日に辞任していた。

 飯塚さんの無念はもちろん、今も、いや、私たちが正月におせちを食べている瞬間も、あったかい布団で寝ている瞬間も、異国の地で不安を感じて生きているだろう田口八重子さんのお気持ちを考えると、のどが締め付けられるような感覚に襲われる。

 「我々があきらめないことこそ解決につながる」。飯塚さんは11月に開催された、拉致問題に関する集会で約800人の参加者を前に呼びかけた。八重子さんは1978年、22歳の時に失踪。当時1歳だった八重子さんの長男耕一郎さん(44)を引き取り育てた。

 そんななか、87年に発生した北朝鮮によるテロ、「大韓航空機爆破事件」の実行役、金賢姫元死刑囚に日本語を教えさせられていたことが警察庁の捜査で91年に判明。飯塚さんは長年、世間から身を隠すような生活を余儀なくされた。

 拉致被害者家族の高齢化が進んでいる。おととし2月には有本恵子さん(61)の母嘉代子さんが、6月には横田めぐみさんの父滋さんも亡くなった。

 私たち一人ひとりが今この時間も、北朝鮮で拉致被害者がほぼ同じ時間に朝を迎え、夜を迎え、食事の時間を迎えている、ということを忘れないことが、解決につながるのではないのだろうか。

(也)