先日の御坊市で最大震度5弱を観測した。御坊市、または日高地方にいた多くの人がその揺れに驚いたことだろう。筆者も今まで感じた地震の中でも大きい方で、「ついに南海トラフが来たか」とまで思った。

 御坊市内の会社の2階にいたが、人によって地震発生後の対応が大きく違った。揺れが収まると同時に、荷物を持ってすぐに外に避難する人、その後をついて避難する人、避難せずその場に残る人。地震後、気がつけば部屋には数人だけしか残っておらず、皆がスマホで調べていた。筆者もその一人だった。

 以前、地震に関する講演会で正常性バイアスについて聴いた。正常性バイアスとは、地震など危機的状況に陥っても都合の悪い情報やデータを無視・過小評価し、「自分は大丈夫」などと思い込もうとする心のメカニズム。そういう人は、地震直後に、テレビやスマホなどで情報を調べる。「情報収集」という行動をすることで、自分に「地震への対応をしている」と言い聞かせているのだという。

 筆者もまさにその状態だった。今までに経験したことがない大きな揺れだったにも関わらず、どこかで「大丈夫」と思っていたのだろう。直後に再び同じか、さらに大きな地震が来ていたかもしれず、また津波が襲来する場合は一刻も早く避難しなければならない。部屋にとどまっておく理由はなかった。

 マグニチュード8~9クラスの南海トラフ地震は、今後30年以内に70~80%の確率で発生するとされている。大地震が来たときには、直後の行動がそのまま生死の境になるかもしれない。その時に備え、避難への意識を新たにしなければならない。今回の地震でそう感じた。

(城)