ハロウィンの夜、京王線の特急列車の中で乗客を刺し、車内に油のような液体をまいて火をつける事件が起きた。逮捕された24歳の男は、「人を殺して死刑になりたかった」という。その8日後、九州新幹線の車内で床に液体をまき火をつけたとして69歳の男を放火未遂の疑いで現行犯逮捕。容疑者は「京王線の事件を見てやった」と話した。今年8月には、小田急線の車内で36歳の男が、複数の乗客を刃物で切りつけた。逮捕後容疑者は「逃げ場のない電車なら人を大量に殺せると思った」などと供述。京王線の事件の容疑者もまた、この「小田急線の刺傷事件を参考にした。誰でもよかった」などと話したという。

 安全な乗り物である電車での無差別殺人未遂の連鎖が注目されるが、先日は宮城県の認定こども園に刃物を持った男が侵入する事件も起きた。園職員の機転で園児も職員も無事だったが、この容疑者もまた「子どもを殺す目的で侵入した。死刑になりたかった」と口にしている。

 無抵抗な人を標的にする犯行を引き起こす要因に新型コロナが関係しているのではと考えてしまう。2年近く極力人と離れて過ごし、顔を合わせてもマスク越し。コロナ前なら、誰かに会って気分転換したり、笑い合って元気を取り戻したりできたのに、その機会がないまま希望を見失い、人生に絶望してしまったのではと。

 仕事柄、顔写真を撮ることが多く、緊張した表情の人が笑顔になってくれたとき、年齢性別に関係なく「素敵」「かわいい」とカメラ越しにうれしくなる。人の笑顔には、相手も笑顔にさせる力があり、笑うと沈んだ気持ちも軽減できる。徐々に日常を取り戻しつつあるが、大きな声で笑ったり、マスクをせずに過ごせる日はいつになることか。(陽)