由良町門前地内の天神池近くの旧火葬場入り口に建立されていた六地蔵が興国寺無常堂に321年ぶりに移され、21日、現地で安座開眼式が営まれた。1700年に故人が良い世界に生まれ変わることを願って建てられたが、1974年(昭和49)に町営の斎場が建設されたことを受けて旧火葬場が廃止され、六地蔵は残ったままになっていた。

 六地蔵は、「地獄道」「餓鬼道」「畜生道」「阿修羅道」「人間道」「天道」の六道を輪廻転生する衆生を救済するという思想から、寺院の門前や墓地などをの入り口に建立される。

 今回の六地蔵は高さ約1㍍で、旧火葬場近くに6体が建立されていた。礎石に刻まれた年紀からみると1700年に畑、中、門前、里、横浜の各地区の有志によって建てられたという。火葬場は江ノ駒地区に町営の斎場が建設されてからは使用されていなかったが、六地蔵はそのままの状態になっていた。

 以前から移設の声は上がっていたが、昨年3月ごろから本格的に検討を始め、移転先を興国寺の無常堂に決定。今年6月には六地蔵移転実行委員会を結成し、檀家から移設に伴う浄財を集めるなど着々と準備を進めた。10月から地元の石源石材店(池田隆代表)が地蔵の修復などを行い、今月中旬に設置が完了した。

 開眼式には門前、中、畑地区の関係者ら約20人が出席。興国寺の田中禅徹監院と長谷寺(畑)の岩上大真住職が法要を執り行った。
 最後に委員会を代表し、岡眞治さんが「先人が残した六地蔵を今後も保存、管理し、見守り続けていきたい」とあいさつした。