厚生労働省は、ひきこもり支援を行う民間事業者に、通称「連れ出し屋」と呼ばれる悪質な業者があるとして、注意を呼びかけている。連れ出し屋は、高額な利用料を請求したうえ、利用者に暴力をふるったり、軟禁状態にする業者もあるとされている。

 悲惨な事件に発展したケースもある。自立支援業者の支援を受けていた、ひきこもりの40代の男性がアパートで餓死しているのが見つかった事件で、今年1月、男性の家族が業者を相手取り、計約5000万円の損害賠償訴訟を東京地裁に起こした。 

 原告団によると、家族がインターネットで見つけた「社会生活、職探しまでサポートする」とのうたい文句を掲げる業者にすがり、母親は持ち家を売って、契約金900万円超を払ったという。
 母親が契約後、屈強な体格の男3人が自宅に来て、息子は強引に施設に連れ出された。入所後、母親が息子に連絡を取ろうとしても、業者に断られ続けたという。息子は携帯電話や身分証明書等を取り上げられ、軟禁状態にされていた。

 ひきこもり状態にある人は全国に100万人以上いるとされ、8050問題に代表されるように、ひきこもりの問題は大きな社会問題になっている。ひきこもりの子をもつ親は、何とか事態を打開出来ないかと、焦りの気持ちを持つことが多い。

 近年ではオレオレ詐欺など、高齢者から財産を奪い取ろうとする反社会勢力が問題となっているが、財産だけでなく人間の命や人生、心まで破壊する行為は断じて許されない。子を想う親心につけこむいやらしさも、卑怯そのものだ。

 現在は保健所などの公的機関による相談や事業所の紹介が行われている。悩んでいる方はぜひ相談を。 (也)