東京五輪2020が閉幕しても、後日談が続々と届いている。印象深い話をいくつか。陸上110㍍ハードルに出場したジャマイカの選手は準決勝前、選手村で乗るバスを間違えて競泳会場へ向かってしまった。戻っていては競技に間に合わない。ボランティアの女性に話したところ、タクシー代を渡してくれた。おかげでスタジアムに到着し、十分な準備をして走ることができたという。その選手は準決勝を通過し、なんと決勝では金メダルを獲得。その後女性を探して再会を果たし、ジャマイカ観光大臣はジャマイカへ招待しているという。同じ日本人として誇りに思う。

 ポーランドのやり投げの女性選手は獲得した銀メダルをオークションに出品した。センセーショナルなニュースに目を疑ったが、話を聞いて納得。母国の幼い男の子が心臓手術が必要で、費用を工面して支援しようとオークションに出品したのだ。地元企業が競り落とし、メダルを本人に返還し、手術費用を提供するという。あっぱれというほかない。女性のコメントがまた素晴らしかった。「メダルの真の価値は常に心にとどまる。この銀はクローゼットでほこりをかぶる代わりに人の命を助けられる」。人間性は金メダル以上だ。

 華々しいスポーツの祭典、極めた技術と精神力にスポットが当たるが、本当の価値は人の心にあるように思う。前述の女性ボランティア、ポーランドのメダリストや支援企業のように、人の力になりたいという純粋な気持ちが人を動かす力となる。勝てばいい、強ければいい、そうではない、人間性が競技や普段の行動にも反映される。そんなことを感じさせられるニュースだった。子どもたちにはぜひ触れてもらいたい記事である。(片)