みなべ町では梅の収穫が真っ盛り。木になった青梅をもぎ取るいわゆる「取り」は全体的には終盤だが、落ちた梅を収穫する「拾い」は、比較的暖かい海岸線ではピークを過ぎたところ。旧南部川村などでピーク、高城、清川ではこれから本番を迎える。今年は事前の着果調査の通りほとんどで豊作となっており、うれしい悲鳴が聞こえている。拾い梅を買い取る加工業者のタンクが満タンになったという話や、売りに行ったら行列で1時間待ちだったという声も聞かれる。梅はまちを支える極太の基幹産業。2年続きの不作だっただけに、町中が活気づいている。

 近年、この大事な収穫時期に労働力が不足するという産地の課題がある。少しでも解消の一翼を担えればと、筆者も友人に誘ってもらって、短期間ながら取り、拾いの労働力となって収穫を体験してきた。山の斜面の拾いは初体験で、青いネットを上手に敷き詰めて梅がポイントポイントに集まるよう工夫されていた。本来ならなかなか作物を作るのが難しい急斜面を活用した栽培方法。先人の知恵と工夫が今の繁栄につながっていることを身をもって感じることができた。世界農業遺産に登録されるのもうなずける。

 世界農業遺産みなべ田辺の梅システムは里山の斜面を利用し、山頂部分には紀州備長炭の原木となる薪炭林を残し、そこに集まるニホンミツバチが斜面に植えられた梅の交配を担当。製炭や梅を中心とした農業で生活を支えてきた。このシステムが400年続いている。これからも支えていくのは人でしかない。副業の時代と言われる今、地域の企業が協力できることもあるのではないだろうか。(片)