花を見るのが好きだ。自分で育てたり生けたりという技術はないが、花の色や形、風情に季節を感じるのはとても楽しい。今の時期ならなんといってもアジサイである◆子どもの頃よく見かけたのは本アジサイに額アジサイの2種類ぐらい。それが今は5月の母の日前から、実にさまざまな種類のアジサイが生花店等の店頭を華やかに飾る。6月になれば、毎年多くの花を咲かせてるお宅を訪ね、写真を撮らせていただく◆円錐形にこんもりと大きな白い花を咲かせる「柏葉アジサイ」。よく晴れた空のように鮮やかな青の「山アジサイ」。一枚一枚の花弁(ではなく本当は萼なのだが)がねじれたような「風車」。美しい紅色の「火の鳥」。かわいい名前の「てまりてまり」。大小の花が幾何学的に重なった「万華鏡」。天使を意味する「エンジェリカ」は細いピンクの縁取りがあるイエローがかった花で、時が経つに連れて純白になる。何百と言う種類があり、とても覚えきれない。◆知人にもらった小さな挿し木の枝から始まり、今では2㍍ほどの大きな株など85本もあるという人は「買ったものをそのまま植えるのではなく、育てていく楽しみを教えてもらった」という。200近い鉢を世話する人は「時間がかかるし、一つ一つが結構重いので移動も大変で腰が痛くなる。でもこの季節、きれいに咲いてくれると苦労が全部報われる」。大変な世話があって初めて、美しい花を眺めさせてもらうことができると知った◆今回、コロナ禍で「世話する時間がたっぷりとれたから、例年より手をかけることができた」という人も。我慢を強いられる日々の中にも、何かとじっくり向き合うことで喜びを見いだせる。アジサイの花言葉はいろいろあり、紫は「辛抱強い愛情」だという。(里)