写真=孵化後80日のシロアマダイ

 串本町の県水産試験場は、高級食材として扱われるシロアマダイの稚魚生産に成功したと発表した。県内の捕獲量は減少しているが、高値で取り引きされ、日高地方でも水揚げがある。同試験場場は「今後は大量に育成する技術を確立し、将来的には人工育成した稚魚の放流につなげていきたい」と話している。

 水産試験場は漁業者からの稚魚育成の要望に対応し、2018年度から「種苗生産技術の確立」をテーマに試験を開始。3年目となった20年度の試験で、産卵期(12~4月)の4月19日に串本沖で捕獲したオス2匹とメス1匹の親魚計3匹を使って人工授精。2万4000個の受精卵を採取し、4㌧の水槽で育てた結果、4・2%の生存率となる1008匹の稚魚が確認された。体長は60日で50㍉程度、80日で70㍉以上に育った。餌は初期の頃はプランクトンのシオミズツボワムシを与え、それ以降は配合飼料などで飼育した。

 今後も試験を継続し、数万匹単位の稚魚を安定的に育成させる技術の確立を目指す。現在の課題としては親魚を良い状態で確保することなどがあるという。

 アマダイ類には主にシロアマダイとアカアマダイの2種類があり、シロアマダイは大きいもので60センチを超える。身の弾力が強く、脂がのり、アマダイ類の中で最もおいしいとされる。水揚げ量が少なく、市場では1㌔当たり1万円を超える高値で取引されることもある。

 水産試験場は「今後も試験を重ね、将来的には放流できるようにし、水産資源の確保につなげたい」と話している。