旧美山育ちの筆者にとってズンゴ(モクズガニ)は、大好きな川の恵みの一つだ。腹の一部が丸くなっているのがメスで、中にある卵が濃厚な味わいでとてもおいしい。オスは体が大きい分、身も多く食べごたえがあり、特に爪の部分はごそっと身が取れる。人によってはにおいが気になるそうだが、筆者はそのにおいが味に深みを出しているような気がするし、甲羅ごと半分に割ってみそ汁にしてもいいだしが出る。

 昔の話だが、父はよく、母が大量のズンゴの身をほじくり出して、カニチャーハンを作ってくれたのがおいしかったと言う。なるほど、その身をほじくる作業は大変そうだが、きっとおいしいに違いない。それもそのはずで、高級食材として有名な上海ガニ(チュウゴクモクズガニ)はズンゴと同属であり、足の形状は少し違うが、中身は同じ。そういえば、近年産品販売所で売っているズンゴの値段をみると、2、3匹で1000円などとなっていることもある。しかも型が小さい。二十数年前は1匹50円とかで売られていたこともあるので、すごい価格の上昇。やはり上海ガニと似たうまみがあることなどで、おいしい食材として見直されてきているのだろうか。

 しかし、そんなズンゴがあまり捕獲できなくなったと聞く。価格がいいので、売る目的で乱獲されているというのもあるのかもしれないが、昔から慣れ親しんできたズンゴが口に入らなくなるのは残念である。そうならないためには近年よく言われる「作り、育てる漁業」が必要。日高川や切目川では毎年、地元漁協が放流事業を行っており、環境保護にも一役。今年も秋の味覚が楽しめることを期待している。(吉)