印南町担当になってもうすぐ丸2年。いまだに「かえる橋」には度肝を抜かされる。国道42号を走っていて街中をみれば違和感たっぷりの大きなカエルの顔がついた赤い橋。こんなインパクトのある橋は全国にない。

 建設は1995年3月。費用はなんと9億3500万円。かえるというネーミングは、「努力、忍耐、飛躍」を象徴する「柳に跳びつくかえる」からイメージし、「考える」「人をかえる」「町をかえる」「古里へかえる」「栄える」という5つのかえるにひっかけている。そんなやや強引とも取れるカエルの活用。言い方は悪いが、よくこんな珍妙な橋を、当時の執行部や議会がつくろうとしたものだ。近年、全国的に自治体の財政事情が厳しく、コロナ禍もあって、いま同じような橋を建設しようものなら、「かえる町長」とでも揶揄(やゆ)され、批判の中で計画は進まないだろう。

 ところが、かえる橋を見たさに、全国から多くの人が見に来ている。近くのJR印南駅にはカエルのオブジェも置かれるなどで相乗効果も出ており、もしかしたらかつお節発祥の地よりも有名かも。国のふるさと創生の1億円を使った事業でもあり、当時この1億円で箱物をつくり、のちに借金を抱えるはめになった他の自治体が多い中、かえる橋は息長く一定の成果を上げている。

 コロナ禍だが、かえる橋を見る分には感染のリスクはほぼないので、不要不急の外出自粛が求められている人以外にはどんどん見に来てもらえばいい。ただ、よく見ればかえるの顔の塗装が劣化している。来年は印南町制施行65周年。この機会にリニューアルし、さらにまちを発信してはどうだろう。(吉)