長年の戦傷病者や戦没者遺族支援の功績をたたえる援護事業功労者厚生労働大臣表彰の受賞者が発表され、今年度は県内から4人が受賞。日高地方からは唯一、戦没者遺族援護功労として日高郡遺族連合会副会長を務める印南町島田の前山典子さん(78)が選ばれた。自身、戦争で父を亡くした悲しみを乗り越え、戦没者法要の実施や遺族の処遇改善などに尽力している。

 前山さんは有田市出身の父村上雅一(まさいち)さんと印南町出身の二三子(ふみこ)さんの一人娘として大阪で生まれた。1945年(昭和20)、2歳の時、雅一さんが32歳で戦死。その後、二三子さんの実家に戻ったが、母娘二人三脚の生活は決して楽なものではなく、親戚の食糧支援が身に染みてありがたかった。

 父雅一さんの戦死した場所を公的機関などにも頼んで調べてもらったが、分かったのは「海軍に所属して、南方の海を船で移動中に銃撃に遭って命を落とした」ということまで。自分自身も幼かったため、父との思い出はなかったが、父とよく似ていると言われる自分の顔を見るのがうれしくもあり、誇りでもある。「母は7年前、97歳で亡くなりましたが、昔から父の戦争の話は辛いためか、全くしてくれませんでした。いまとなってはもう少し聞いておけばよかったと思います」という。

 遺族会の活動としては1970年頃、印南町での青年部メンバーとなり、若い遺族たちとの輪を広げ、他の市町村の青年部結成の模範にもなった。2010年4月からは日高郡遺族連合会副会長兼理事となり、日高地域の慰霊・顕彰事業の実施や遺族の支援に尽力。地域の追悼法要や慰霊祭などに多くの会員を参加させた功績も高く評価されている。

 受賞について「名誉な賞をいただき、私で本当にいいのかという思いとともに、遺族会を代表していただいたものだと思っています。今後もお役に立てることがあればさせていただきます」と話している。

 今年度は新型コロナウイルスの感染予防で表彰式は行わず、受賞者宅に賞状が届けられている。

写真=表彰状を手に前山さん