他のことを書くつもりだったが、テレビ朝日系「林修の今でしょ講座」で生誕250年のベートーヴェン特集を見てそのことで頭がいっぱいになった。20代の頃にロマン・ロランの「ベートーヴェンの生涯」を読んで以来のファンなので◆交響曲第五番「運命」や「エリーゼのために」、そして今や年末には欠かせない交響曲第九番「歓喜の歌」とクラシックファン以外にもその作品はよく知られるベートーヴェン。実は、音楽史において彼以前と以後で劇的に異なるほどその業績は革命的であったことを、番組案内人の葉加瀬太郎さんは丁寧に解説してくれた。小学校の音楽室にあった作曲家の肖像画で、バッハやハイドンらが羊のようなモコモコ頭だったのに彼だけは蓬髪を振り乱して鋭い目で描かれていたが、それは彼の生き方の証。それまでの音楽家が宮廷お抱えで礼装のかつらをかぶっていたのに対し、彼はパトロンのご注文に応じてBGMのような生活の脇役としての曲を作る生活を拒否。フリーとなって「この曲を聴け」とばかりに、聴衆に全身で耳を傾けさせる、主役となる音楽を世に出し続けた◆彼が人生半ばで聴覚を失ったことは有名だ。絶望し「ハイリゲンシュタットの遺書」を書くが、その後も奮起して曲を生み出す。最後の交響曲となった第九はほぼ完全に聞こえなくなってから書かれた。この作品で彼は初めて、当時交響曲で禁じ手とされた合唱を大胆に取り入れる。番組では言及されなかったが、「ベートーヴェンの生涯」によると、初演に聴衆は熱狂的な喝采で応え、ベートーヴェンは喜びのあまり失神したという◆生涯独身で子孫を残さなかったベートーヴェンだが、その誇りと情熱に貫かれた人生は、後世の人々に永遠に残る感動を与えてくれた。(里)


