読書の秋である。10月27日から今月9日までの2週間は読書週間。活字中毒の筆者には読むことは呼吸と同じでやめると死んでしまいそうだが、なぜそうなったか記憶をたどってみた◆原点は母が毎晩絵本を読み聞かせてくれたことと思われる。だが身近な本を手あたり次第に読む時期から積極的かつ能動的な読み方に変わったのには、はっきりしたきっかけがある。それはシャーロック・ホームズだった。中学校入学前の春休み、父の古いホームズ本を読み始めると面白くてやめられなくなった。素晴らしい頭脳を持ちながら常識はあまりなく、皮肉っぽい口をきく変人のホームズ探偵、温厚で人のいいワトソン医師の名コンビの数々の冒険に心をつかまれ、長編「四つの署名」では、ホームズ率いる浮浪少年チーム「ベーカー街特務隊(ベーカー・ストリート・イレギュラーズ)」が賊の船を見つけたあたりで母にしょうゆを買ってくるよう頼まれ、現実に引き戻されてしまったのが腹立たしくて仕方なかったのは今でも覚えている◆続いてアメリカのミステリ作家エラリー・クイーンにハマった。著者と同名のクイーン探偵のファンになり、中学生にも手の届く文庫本を1冊、また1冊と買い揃えていった。舞台となっているニューヨークについて調べたり、父のクイーン警視との親子漫才のような会話を英訳しようと試みたり、完全にその世界に没入し、現実との二重生活を送っている気分だった◆「ためになる」「勉強になる」などの理由でなく、ただただ面白いから、目が夢中で活字を追っていく。その経験がなければ本好きにはならない。誰にとっても、それぞれに相性のいい本がきっとあるはず。読む楽しみは一度身についたら離れない宝物である。(里)