県立近代美術館、社会福祉法人和歌山県福祉事業団主催の第2回「おでかけ美術館」が10日から、御坊市御坊の「ぎゃらりーなかがわ」(旧中川邸)で始まった。10月25日まで。和歌山市出身、大阪市在住の画家田中秀介さん(34)の作品を展示。初日は田中さんも会場に常駐し、来場者に解説など行った。「日高御殿」とも称された、国の登録有形文化財を会場とした絵画展は「非日常を味わえる、不思議な雰囲気」と好評となっている。

 田中さんは1986年、和歌山市生まれ。日常をちょっと違った視点で捉えた作品などを手がけており、今回は小品から200号(259×194㌢)の大作まで41点を展示している。会場は順路に沿って6つのコーナーに分け、①睨み②傍ら③案件④案外⑤他人事⑥呆然――と、少しずつ対象との距離感が大きくなるようにテーマを設定。作品とユニークなタイトルを合わせて鑑賞すると、絵の持つ奥深さが分かるようになっている。昭和初期風の洋間、繊細な格子のある座敷、床の間などに、日常の何気ない風景に違った角度から光を当てた田中さんの絵が飾られ、ギャラリー全体が味わい深い不思議な空間に。皿の上の焼きサバ、路上の「スクールゾーン」の文字、補修中のテープを貼ったガラス窓など身近な物がクローズアップされ、一見それとは分からないように描かれている。初日から訪れた来場者は、田中さんの解説を聞きながら1点1点を眺め、作品の世界をじっくり味わっていた。

 田中さんは「御坊を訪れるのは初めて。東洋の色彩を研究しているのですが、このような『和』の建物の持つ色合いの中で、私の絵は不思議になじんでいるように思います」と話している。

 入場は無料。休館日は水曜、開館時間は午前10時から午後4時まで。問い合わせは県立近代美術館℡073―436―8690。

写真=御坊で初めての作品展を開いている田中さん