美浜町三尾、法善寺前住職の岡本淨さん(79)は、傘寿を機にふるさと三尾の思い出を書き留めた本「わたくしの故郷 なつかしき三尾」を出版した。

 1941年(昭和16)生まれの岡本さんが、生まれ育った三尾での幼少期の思い出や当時の風習、周囲にいたカナダ移民者のことなどが細かく記されている。まだ幼かった戦時中の逢母の空襲や、防空壕へ避難した記憶もつづり、特に印象に残っているという「戦後、駐留していた兵隊さんが列になって帰っていくとき、乾パンをくれた」エピソードも書かれている。

 戦後の小学校の様子、物がない中の当時の遊び、鶏の世話、風呂焚きなどの思い出の中でも、残り火で焼いた焼き芋を楽しんだこと、三尾で初めてテレビが見られるようになったときのことなど貧しいなかにも心豊かな様子が伝わってくる。漁業、医療、偉人などにも触れ、岡本さんが撮った写真のほか、父鳳堂さんが撮っていた古い写真も使われている。

 岡本さんは、「大学生や、語り部ジュニアの子たちが、三尾の昔のことを聞きにきてくれる機会があり、古いことを知る人も減ってきているので書き留めておくことにしました。私の行動範囲が中心で、記憶をたどった内容に過ぎませんが、子どもさんにも読みやすくしてあるので、地域の学習に役立ててもらえれば」と話している。

 同書は、販売しておらず、町立図書館やカナダミュージアムで読むことができるほか、希望者には進呈するという。問い合わせは岡本さん℡0738―62―2022。

写真=著書を手に岡本さん