香港で11・12日、注目すべき選挙が行われた。9月に行われる立法会(議会)議員選挙へ向けて民主派の候補を絞り込むための予備選挙で、香港政府がこの選挙について「国家安全維持法違反の可能性がある」と警告したことから投票者数の低調が懸念されていた。が、実際には予想を遥かに超える数の市民が票を投じたのだ◆1986年にフィリピンで起こったピープルパワー革命、87年に韓国で起こった6月民主化抗争、89年のベルリンの壁崩壊と東欧諸国民主化、2011~12年に起こった「アラブの春」。自由を求める市民の意志が体制を変え、世界を動かしてきた事例である。「転がる香港に苔は生えない」(星野博美著、文春文庫)などの本を読んだこともあり、昨年春からの香港民主化デモについてもずっと関心をもって見てきた◆今年になって、コロナ禍によりデモは制限された。そして先月30日に香港国家安全維持法が施行。翌7月1日には早くも「香港独立」の旗を持っていたとして第1号の逮捕者が出た。「プラハの春」「天安門事件」など強大な権力に圧殺された革命も少なくないが、あれほどの熱をもった運動も結局は国家権力に押しつぶされてしまうのかと苦い思いを抱いていた◆そしてここへ来て行われた、民主派の市民にとって当局に意思を示す機会となる予備選挙。国際社会の耳目を集めるため多くの投票を願う主催者の目標は2日間で17万人だったが、蓋を開けてみると初日だけで23万人以上が投票し、2日間の集計は60万人を上回った◆人類は自然災害にウイルスという、協働して乗り越えるべき大きな課題に直面している。人が人の自由を奪い迫害するなどという不毛な行為は、速やかに廃されるべきであろう。(里)


