2019年度第3回市民教養講座の講師は、「笑点」でおなじみの落語家・林家木久蔵さん。「木久蔵流 笑うが一番」をテーマに講演と、古典落語「親子酒」を披露した◆笑いと健康の関係は、よく知られた話だ。がん細胞をやっつけるナチュラルキラー細胞、NK細胞が笑いによって活性化するという。木久蔵さんもそれを語った。大いに笑ったあとは確かにNK細胞の数値が上がったが、「芝浜」など泣かせる人情噺でもやはり数値は上がり、要するに感情豊かに暮らすことが体にもいい影響を及ぼすということだ、と◆「親子酒」は、禁酒を誓い合った酒好きの商人親子が同時に誓いを破り、言い争う噺。6年ほど前に林家たい平さんも演じていたが、テンポがよく、「お父さんただ今帰りました」と酔った息子がドーッと部屋に倒れこむタイミングが絶妙におかしかった。木久蔵さんのはもう少しほんわかしたテンポで、酔った親子が言い合いながらも仲良しという雰囲気があって、講演で語られた父の木久扇(きくおう)さんとの親子関係を彷彿させた◆木久蔵さん、木久扇さんは、落語史上初の「親子同時ダブル襲名」。講演ではいろんな話題が「小ネタ」のように繰り出されたが、大きなテーマは「数少ない二世の噺家である」という立場であり、息子の目からみた父親の存在だったような気がする◆木久扇さんが喉頭がんから復帰した逸話で、4カ月ぶりに声が出た時のことを話した。「何気ない日常を朝から晩まで過ごせることが何よりの幸せ」という言葉は、その次のギャグ「健康のためなら死んでもいい」を引き出すネタふりのようだが、そればかりではなく、やはり偽らざる真情なのだろう。してみると、講演すべてが長い一つの人情噺だったのかもしれない。(里)